2016

9件

編集部の総括

AlphaGoが囲碁で勝ち、Tayは16時間で止まる

3月、AlphaGoがイ・セドルに4勝1敗で勝った。囲碁でプロ棋士に勝つのは10年先と言われていたところに出た結果で、アジアを中心に大きく報じられる。

同じ3月、MicrosoftのチャットボットTayがTwitterで公開され、差別的な発言を学習して16時間で停止した。人のいる場に出したAIが、そこにいる人からそのまま学んでしまうことが示される。

5月、Googleが自社設計のAIチップTPUを公表。9月には翻訳をニューラル機械翻訳に切り替え、精度が一段上がった。10月にはMicrosoftが会話音声の認識で人間並みの誤り率に達したと発表する。

OpenAIは4月に強化学習のツールキットOpenAI Gymを、12月に訓練環境Universeを公開。設立から日が浅く、道具を配って研究の土台を作る動きが中心だった。11月にはMicrosoft Azureを主要なクラウドに採用している。6月には、AIの安全を具体的な工学の問題として並べた論文「Concrete Problems in AI Safety」をGoogleらと共同で発表した。

このブロックは編集部が書いた総括です。出典付きの記録とは分けて表示しています。

記録9件
  1. 3/15
    研究Google / デミス・ハサビス / デビッド・シルバー / イ・セドル

    AlphaGoがイ・セドルに4勝1敗で勝利

    DeepMindの囲碁プログラムAlphaGoが、韓国のトップ棋士イ・セドルとの5局勝負(DeepMind Challenge Match、ソウル、3月9日〜15日)を4勝1敗で制した。AlphaGoが第1・2・3・5局を、イ・セドルが第4局を取り、いずれも投了決着。囲碁は探索空間が膨大で、チェスのように力任せの探索では解けず、コンピュータがトッププロに勝つのはまだ10年先と見られていた。その予測が一気に覆った。全世界で2億人が視聴したとされ、AIが人間の直観の領域に届いたことを社会全体に印象づけた出来事である。第2局37手目の「肩ツキ」は、人間の定石にない一手として棋士たちに衝撃を与えた。

  2. 3/23
    製品Microsoft

    チャットボットTayが差別発言を学習し16時間で停止

    MicrosoftがTwitter上に実験的なチャットボットTayを公開した。10代のアメリカ人を模した人格で、やりとりから学習して会話が上手くなっていく設計だった。しかし公開直後から、利用者たちがTayが投げられた言葉を真似て繰り返す仕組みを意図的に突き、差別的・性的・反ユダヤ的・政治的に極端な内容を大量に浴びせた。16時間で9万5,000件以上を投稿し、その相当な割合が攻撃的な内容だった。Microsoftは24時間もたたずにTayをTwitterから引き上げ、多数の投稿を削除して謝罪。組織的な悪用を想定できていなかったと認め、開発工程を見直すとした。「学習するAIを公共の場に置くと何が起きるか」を最も早く、最も鮮明に示した事例であり、以降のAI公開に際するレッドチーム評価や段階的公開の必要性を業界に刻んだ。ChatGPT公開時にOpenAIが慎重だった理由の一つとしても、しばしば参照される。

  3. 4/27
    製品OpenAI / グレッグ・ブロックマン / ジョン・シュルマン

    強化学習ツールキットOpenAI Gymを公開

    OpenAIが設立後初の主要リリースとして、強化学習アルゴリズムの開発・比較のためのツールキットOpenAI Gymのパブリックベータを公開した。シミュレーションロボットからAtariゲームまで多様な環境を共通インターフェースで提供し、ベンチマークが揃わないという強化学習研究の課題に応えるものとされた。

  4. 5/18
    製品Google / サンダー・ピチャイ / Norm Jouppi

    Googleが自社設計のAIチップTPUを公表

    Googleが年次開発者会議Google I/Oで、機械学習専用に自社設計したチップTensor Processing Unit(TPU)を公表した。CEOのサンダー・ピチャイは基調講演で「TPUは1年以上前からデータセンターで動かしており、機械学習の電力あたり性能を一桁改善することが分かった」と述べた。すでに検索の関連度改善に使うRankBrainやStreet Viewの処理を支えていたほか、直前のAlphaGo対イ・セドル戦でも使われていた。汎用GPUを買うのではなく用途専用のチップを自前で作るという選択であり、のちにAnthropicが最大100万基のTPUを確保するなど、Googleの計算基盤事業の土台となっていく。

  5. 6/21
    研究OpenAI / Google / ダリオ・アモデイ / クリス・オラー

    論文「Concrete Problems in AI Safety」発表

    Google Brainのダリオ・アモデイらが主導し、OpenAI・Berkeley・Stanfordの研究者が共著した論文「Concrete Problems in AI Safety」が発表された。安全な探索や報酬ハッキングの回避など5つの具体的な研究課題を整理し、AIの安全性を実践的な機械学習研究の対象として位置づけた。後にAnthropicを共同創業するアモデイとクリス・オラーも名を連ねる、安全性研究の基礎文献となった。

  6. 9/27
    製品Google / Quoc Le / マイク・シュスター

    Google翻訳がニューラル機械翻訳へ移行

    Googleが、ニューラルネットワークによる翻訳システムGoogle Neural Machine Translation(GNMT)を本番規模で導入したと発表した。それまでの句単位の統計的翻訳をやめ、文全体を一度に読んで訳す方式に切り替えたもので、まず中国語から英語への翻訳に適用された。翻訳の誤りが大幅に減り、人間の訳文との差が縮まったとされる。数億人が日常的に使うサービスで深層学習の効果が体感できる形になった初期の事例で、「AIが実際に役立つ」という認識を一般に広げた。この系統の研究は翌年のTransformer論文に直結する。

  7. 10/18
    研究Microsoft / ゼドン・ファン

    会話音声認識で「人間並み」を達成

    Microsoft Researchが、会話音声の認識で人間と同等の精度に到達したと発表した。業界標準のSwitchboardタスクにおける単語誤り率は5.9%で、同じ会話を書き起こしたプロの書き起こし者の誤り率とほぼ同じ、当時の最良値だった(その後5.8%まで改善し人間の水準をわずかに上回った)。深層学習の積み上げによって、長く「人間には及ばない」とされてきた領域の一つが並ばれた瞬間である。生成AIそのものの成果ではないが、当時のMicrosoftが音声認識を主要な研究領域に置いていたことを示す成果でもある。

  8. 11/15
    事業OpenAI / Microsoft / グレッグ・ブロックマン / イリヤ・サツケバー

    OpenAI、Microsoft Azureを主要クラウドに採用

    OpenAIがMicrosoftとの協業を発表し、大規模実験の多くをAzure上で実行してAzureを深層学習・AI研究の主要クラウド基盤とすることを明らかにした。数千から数万台規模のGPUマシンを利用する計画を示した。両社の最初の公式な協業である。

  9. 12/5
    製品OpenAI

    AI訓練プラットフォームUniverseを公開

    OpenAIが、AIエージェントに画面のピクセルを見せて仮想キーボードとマウスを操作させ、人間と同じようにコンピュータを使わせるための訓練プラットフォームUniverseを公開した。Flashゲームやブラウザタスクなど約1,000の環境をGym互換のインターフェースで提供した。プロジェクト自体は後に縮小された。