前史

2010〜2015年8件

編集部の総括

深層学習が実用に届き、人材が大手に集まる

2010年9月、デミス・ハサビスらがロンドンでDeepMindを設立。汎用の知能を作ることを掲げ、ゲームを題材に強化学習を進める。翌2011年、GoogleでもGoogle Brainが発足。大規模なニューラルネットを社内の計算資源で回し始めた。

2012年、画像認識のコンペILSVRCでAlexNetが他を大きく引き離す。深層学習が実用の水準に届くことが示され、研究の潮目が変わった。翌2013年3月、Googleがジェフリー・ヒントンらのDNNresearchを買収。2014年1月にはDeepMindも買収する。人材を会社ごと取り込む競争が始まった。

2015年2月、DeepMindのDQNがNatureに載る。画面の映像だけを見てAtariのゲームを人間並みにこなした。11月、GoogleがTensorFlowをオープンソースで公開。深層学習の道具が、誰でも手に取れるものになる。

12月11日、OpenAIが設立される。イーロン・マスクとサム・アルトマンらが10億ドルの拠出を表明し、非営利として成果を広く公開すると掲げた。特定の企業が知能を独占しないように、という趣旨だった。

Microsoftは2014年4月にCortanaを発表。音声で応じるアシスタントをWindowsとスマートフォンに載せる試みだった。

このブロックは編集部が書いた総括です。出典付きの記録とは分けて表示しています。

記録8件
  1. 9/23
    事業Google / デミス・ハサビス / シェーン・レッグ / ムスタファ・スレイマン

    DeepMindがロンドンで設立される

    のちにGoogleのAI研究の中核となるDeepMind Technologiesが、ロンドンで設立された。創業者は神経科学者でチェスの元天才少年でもあるデミス・ハサビス、シェーン・レッグ、ムスタファ・スレイマンの3人。法人としての設立登記は2010年9月23日で、当初はFriars 2022 Limitedという名称、同年11月15日にDeepMindへ改称して正式に始動した。神経科学と機械学習の知見を持ち寄り、汎用的な知能の解明を掲げた研究企業として出発した。2014年にGoogleが買収し、2023年にGoogle Brainと統合されてGoogle DeepMindとなる。

  2. 時期不明
    研究Google / アンドリュー・ング / ジェフ・ディーン / グレッグ・コラード

    Google Brainが発足

    Googleの大規模ニューラルネットワーク研究チーム「Google Brain」が発足した。スタンフォード大学のアンドリュー・ングが「Deep Learning Project at Google」として始めた取り組みに、Googleフェローのジェフ・ディーンと研究者のグレッグ・コラードが加わった形で、当初は業務時間の20%を使う片手間のプロジェクトだった。Google Xの一部として始まり、成果が大きかったためGoogle本体に戻された。2012年6月には、1万6,000個のプロセッサとYouTubeから集めた1,000万枚の画像を使い、ラベルなしの学習だけで猫を見分ける特徴を獲得した論文「Building high-level features using large scale unsupervised learning」を発表。New York Timesが「猫を見分けるのに何台のコンピュータが必要か——1万6,000台」と報じ、深層学習が一般の関心を集める契機となった。以降、Google BrainはTensorFlowやTransformerを生み、2023年にDeepMindと統合される。

  3. 3/12
    事業Google / ジェフリー・ヒントン / アレックス・クリジェフスキー / イリヤ・サツケバー

    GoogleがヒントンらのDNNresearchを買収

    Googleが、トロント大学のジェフリー・ヒントンと大学院生のアレックス・クリジェフスキー、イリヤ・サツケバーが2012年に設立したDNNresearchを買収した。金額は非公表。3人は前年のImageNetコンペティションで畳み込みニューラルネットワークによって物体認識の精度を劇的に引き上げた張本人であり、Googleはその研究と人材をそのまま取り込んだ。クリジェフスキーとサツケバーはGoogleに入社し、ヒントンは大学とGoogleの研究を掛け持ちした。研究成果の利用権ではなく、研究者を抱える会社ごと買う形の買収である。なおサツケバーは2015年にGoogleを離れてOpenAIの共同創業者となる。

  4. 1/26
    事業Google / デミス・ハサビス / シェーン・レッグ / ムスタファ・スレイマン

    GoogleがDeepMindを買収

    Googleが、ロンドンのAI研究企業DeepMind Technologiesの買収を明らかにした。買収額は公式には非公表だが、5億ドル超と報じられた(4〜6億ドルとする報道もある)。交渉はGoogle CEOのラリー・ペイジが主導したとされる。DeepMindは製品を持たない研究企業だったが、深層強化学習でAtariのゲームを学習させる成果が注目されていた。買収の条件として、AI技術が濫用されないよう監視する倫理委員会を設けることが合意されたと報じられた。研究部門をロンドンに置いたまま独立性の高い運営を続け、2016年のAlphaGo、2020年のAlphaFold2といった成果を生む。2023年にGoogle Brainと統合されGoogle DeepMindとなり、Geminiの開発主体となった。

  5. 4/2
    製品Microsoft / サティア・ナデラ / ジョー・ベルフィオーレ

    MicrosoftがデジタルアシスタントCortanaを発表

    Microsoftが開発者会議Buildで、音声で操作するデジタルアシスタントCortanaを発表した。Windows Phone 8.1に搭載され、検索エンジンBingを基盤に、利用者の行動から質問を組み立てて学習していく設計とされた。名称はゲーム『Halo』のAIキャラクターに由来する。AppleのSiri、Googleの音声アシスタントに続く動きで、生成AI以前の「話しかけて使うAI」の時代を代表する製品である。のちにCortanaは縮小され、2023年以降Microsoftのアシスタント戦略はCopilotに置き換わっていく。

  6. 2/26
    研究Google / Volodymyr Mnih / デビッド・シルバー / コライ・カブクチュオール

    DeepMindのDQN論文がNatureに、Atariを人間並みに

    Google DeepMindが「Human-level control through deep reinforcement learning」をNature誌に発表した。画面のピクセルとスコアだけを入力として与え、同一のアルゴリズム・ネットワーク構造・ハイパーパラメータのまま、Atari 2600の49種類のゲームを学習させたところ、多くのゲームでプロのテスターに匹敵する水準に達したというもの。深層学習と強化学習を組み合わせる「深層強化学習」が実用的に機能することを示した論文であり、DeepMindがGoogleに買収された理由を世に示す成果となった。同じ深層強化学習の枠組みは、翌年のAlphaGoでも使われている。

  7. 11/9
    製品Google / ジェフ・ディーン / ラジャット・モンガ

    GoogleがTensorFlowをオープンソース公開

    Googleが機械学習フレームワークTensorFlowをApache 2.0ライセンスでオープンソース公開した。発表はジェフ・ディーンとラジャット・モンガによるもので、社内で使ってきた第2世代の機械学習システムを、ライブラリ・ツール・チュートリアル・サンプルごと外部に開放した。前世代のDistBeliefから速度・スケーラビリティ・実運用への適性が改善され、一部のベンチマークでは2倍速いとされた。Google Photosの画像検索やGmailのSmart Replyを支えてきた技術をそのまま出した形である。研究の成果を論文だけでなく実装ごと共有する流れを決定的にし、深層学習の裾野を一気に広げた公開となった。のちにPyTorchとの主導権争いが続くが、この時点では業界標準の位置を占めた。

  8. 12/11
    事業OpenAI / サム・アルトマン / イーロン・マスク / イリヤ・サツケバー

    OpenAI設立

    非営利のAI研究組織としてOpenAIの設立が発表された。共同会長にサム・アルトマンとイーロン・マスク、リサーチディレクターにイリヤ・サツケバー、CTOにグレッグ・ブロックマンが就任。出資者らは総額10億ドルの拠出を表明し、「人類全体の利益のためのAI開発」を掲げた。